1日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りが1.45%台まで低下し、格付け会社フィッチ・レーティングスが「米債務上限が引き上げ、もしくは停止されなければ米国債は現在の最上位信用格付け『AAA』を失う可能性がある」と警告したことで110.91円まで軟調に推移した。ユーロドルは欧州時間発表の9月ユーロ圏HICP速報値が前年比で予想を上回ったことから1.1607ドルまで堅調に推移した。


 本日の東京外国為替市場のドル円は、先週末のダウ平均が上昇していることはリスク選好の円売り要因だが、米10年債利回りが1.46%まで低下しており、連邦債務上限や中国恒大集団への警戒感などで上値が重い展開が予想される。


 ユーロ圏9月のインフレ率が13年ぶりの高水準を記録し、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ指標と注視している米8月個人消費支出(PCE)価格指数も前年比+4.3%となり、7月の前年比+4.2%から上昇していたことで、ラガルドECB総裁やパウエルFRB議長の見解「インフレ高進は一時的」が揺らぎ始めている。


 米10年債利回りは、11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でテーパリング(資産購入の段階的縮小)が開始される可能性が高まり、原油価格が上昇したことで1.56%台まで上昇した後、1.46%台まで低下している。米10年債利回りの一目均衡表・転換線は1.43%だが、ここは住宅ローン担保証券(MBS)市場でのコンベクシティヘッジのトリガーポイントになっている。すなわち、9月22日のFOMC声明とパウエルFRB議長の会見を受けて、米10年債利回りはコンベクシティヘッジにより1.43%を上抜けて1.56%台まで上昇しており、ドル円も109円台から112円台まで上昇した。もし、トリガーポイントで一目・転換線の1.43%を下回った場合、10年債利回りは低下し、ドル円も109円台まで下落する可能性が高まることになる。さらに、9月のFOMCで2022年の利上げを予想していたタカ派の9名の内、カプラン米ダラス連銀総裁とローゼングレン米ボストン連銀総裁が倫理規定違反で辞任となり、クラリダFRB副議長も倫理規定違反が報じられていることで、9月の雇用統計が8月のようなネガティブサプライズだった場合、11月のFOMCでのテーパリング開始の可能性が低下することになる。


 連邦債務上限の引き上げ、あるいは2022年12月までの適用停止を巡る米上院の協議は難航することが警戒されており、イエレン米財務長官が警告したXデイである10月18日、TB利回りが示唆するXデイの10月28日に向けた駆け引きを見守ることになる。格付け会社フィッチ・レーティングスが「米債務上限が引き上げ、もしくは停止されなければ米国債は現在の最上位信用格付け『AAA』を失う可能性がある」と警告しており、2011年8月の米国債格下げショックの再現に要警戒となる。

 ジョージ・ソロス氏が「中国版リーマン」と警鐘を鳴らしている中国恒大集団のデフォルト(債務不履行)リスクに関しては、米ドル債の利払いが履行されず、30日間の猶予期間に入っていることで、Xデイは10月23日付近となる。また、本日償還のドル建て債には猶予期間が設けられていないことで、クロスデフォルトの可能性が警戒されている。