海外市場でドル円は、オミクロン株に対して既存のワクチンや治療薬の効果が薄いとの報道が相次ぎ、一時112.53円の安値を付けた。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が米上院銀行委員会でタカ派な発言をすると、米金融政策の正常化が前倒しで進むとの見方が広がり一転ドル買いが優勢に。フィキシングに絡んだドル買いのフローも観測されて、一時113.70円付近まで値を戻した。もっとも、フィキシング通過後は再び上値が重くなった。ユーロドルは1.1383ドルまで上昇後、フィキシングで1.1236ドルまで売られ、再び1.13ドル前半に戻した。
本日の東京時間のドル円は上値が限られるか。昨日は月末のロンドンフィキシング(ロンドン16時・日本時間1時)に向けて荒い値動きになった。需給的にドル買いが大きかったことで、ドル円はその後昨日安値112.53円を割り込むことが出来ていない。パウエルFRB議長が米上院銀行委員会で「インフレの高まりが一時的との表現を止める時期がきた」との発言を受けて、市場はFRB議長がタカ派に変わったとの声も買い支え要因になっている。ただし、昨日は2年債などの利回りは上昇したが、長期債の反応は限られた。市場では新型コロナウイルスのオミクロン株の経済への影響を確かめるまでは、FRBも早急に動くのは難しいとの声もあり、直近の経済指標よりもオミクロン株が米国で感染を抑えることができるかが焦点になりそうだ。
昨日の東京時間では、米製薬大手モデルナのバンセル最高経営責任者(CEO)が「オミクロン変異株へのワクチン効果は低下する可能性が高い」との見解を示すと株価とドル円が急落した。このように、現時点ではオミクロン株へのネガティブニュースに市場の反応が強い。仮に、米国でもオミクロン株の感染が観測され、感染拡大の兆候が少しでも見えた場合は市場の反応が大きくなるだろう。また、バイデン政権の首席医療顧問を務めるファウチ氏は、「現時点では、オミクロン株の重症化リスクの判断は尚早」と述べているが、同氏をはじめ米国の医療関係者の判断に今後変化が生じた場合にも、リスクオフが強まる可能性が高いことにも要注意となりそうだ。
なお、本日のアジア時間では7−9月期豪国内総生産(GDP)には注目が集まる。GDPを形成する要素の一つでもある7−9月期豪民間設備投資が、市場予想を下回る2.2%減になったこともあり、GDPの悪化も予想されている。同期間中に豪州の2大都市(シドニーとメルボルン)で厳しいロックダウンが行われていたことで、大きな落ち込み予想となっているが、市場予想よりも更に悪化するようであれば、12月7日に行われる今年最後の豪準備銀行(RBA)の声明文の内容に変化がみられるかもしれない。