21日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは、ロシア大統領府が「プーチン大統領が独仏首脳との電話会談で、ウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認する意向を伝えた」と発表したことを受けて1.1307ドルまで下落した。ユーロ円も129.74円まで下落した。ドル円は114.72円まで軟調に推移した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、プーチン露大統領がウクライナ東部の親ロシア派2地域の独立を承認したことで、24日の米露外相会談やその後の米露首脳会談(予定)への悲観的な見方が台頭しており軟調推移が予想される。

 昨日、プーチン露大統領は、親ロシア派武装勢力が独立を宣言していたウクライナ東部の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を認める法令に署名した。そして、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟はロシアへの直接的な脅威であり、NATOがロシアの安全保障要求を完全に無視したと非難しており、プーチン露大統領の「レッドライン」を再確認している。今週後半には、米露の外相会談や首脳会談が開催されるものの、ウクライナの和平を目指す外交努力が無駄になり、地域の緊張がより一層高まるのではないかとの警戒感が高まりつつある。一方、バイデン米大統領はロシアに対する制裁の準備をしており、米銀による大手ロシア銀行との取引停止などが盛り込まれている、と報じられている。

 24日にブリンケン米国務長官とラブロフ露外相との米露外相会談が開催され、バイデン米大統領はG7首脳会議の開催を呼び掛けている。
 25日には、ルドリアン仏外相とラブロフ露外相がパリで会談し、ウクライナ情勢を巡り協議する予定となっている。その後、バイデン米大統領とプーチン露大統領との米露首脳会談が開催される予定となっている。そして、ロシア、ウクライナ、欧州安全保障協力機構(OSCE)の3者会合が開催され、2015年に合意したウクライナ東部紛争の停戦合意「ミンスク2」を確認することになる。しかし、ロシアがウクライナの親露派地域の独立を承認したことで、ミンスク2が崩壊したとの見方もあり要警戒か。

 1938年のミュンヘン会談(英仏対独伊)では、ドイツ総統ヒトラーがオーストリアを併合した後、チェコスロバキアのズデーテン地方の併合を要請し、戦争を恐れたチェンバレン第60代英首相は譲歩した。翌年1939年、ドイツは、ポーランドで偽旗作戦(false flag)だったグライヴィッツ事件を口実にして侵攻を開始して、第二次世界大戦が勃発した。今回の米露首脳会談では、プーチン露大統領はクリミアを併合した後、ウクライナのNATO加盟禁止とNATO東方不拡大の保証、中東欧からの米軍の撤退を要請しているが、バイデン米大統領が拒否した場合、ロシアによるウクライナ侵攻の可能性が高まることになる。

 プーチン露大統領は、2014年2月27日、ソチ冬季五輪閉会4日後、新月(3月1日)前にクリミア侵攻を開始しており、今年も20日に北京冬季五輪が閉会してから新月(3月3日)に向けて予断を許さない状況は続く。