17日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、ウクライナ情勢を巡る地政学リスクへの警戒感が高まり、2月米フィラデルフィア連銀製造業景気指数や前週分の米新規失業保険申請件数が予想より弱い内容となったことで114.85円まで下落した。ユーロドルは、米10年債利回りの低下を受けて1.13ドル台で下げ渋る展開となった。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、日本の1月のインフレ率を見極めて、ウクライナ情勢を巡るヘッドラインに警戒する展開が予想される。

 8時30分に発表される日本の1月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品を除く総合)は、前年比+0.3%と予想されており、昨年11月と12月の前年比+0.5%からの鈍化が見込まれている。もっとも4月からは、今まで同指数を大きく押し下げていた携帯料金プランの引き下げ要因(寄与度-1.50%程度)が一巡するため、今後の物価上昇率は前年比が大きく跳ね上がることが予想されている。すなわち4月CPIは日銀のインフレ目標2%程度まで加速が期待され、日銀の利上げ観測が高まることになる。

 昨日は、ウクライナ政府軍からウクライナ東部の親ロシア派勢力に向けて迫撃砲が撃ち込まれ、親ロシア派勢力の戦車が反撃した、と報じられたことで、地政学リスク回避の株売り、円買いが活発化した。

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は、「ウクライナで停戦合意違反の動きが強まっており、ロシアによるウクライナ侵攻の口実に利用される恐れがある」と語った。バイデン米大統領は「ロシアが侵攻の口実作りのために偽旗作戦を進めていると確信できる根拠はある」と述べている。

 一方ロシア側はウクライナ侵攻の事実はなく、計画もないと言明した。そして、バイデン米政権が提案した安全保障上の確約について、不十分だと公式に回答し、軍事技術的な措置を講じざるを得なくなる可能性があると警告している。

 過去を振り返ると、プーチン露大統領は2014年2月27日、ソチ冬季五輪閉会4日後、新月(3月1日)前にクリミア侵攻を開始した。北京冬季五輪の閉会を2月20日に控えて、新月(3月3日)に向けて予断を許さない状況は続く。

 プーチン露大統領の北大西洋条約機構(NATO)への要求は以下の4点であり、欧米は現時点では拒否している。
・NATOの東方不拡大の保証
・ウクライナのNATO非加盟の確約
・ロシア国境近辺からの攻撃兵器の撤去
・欧州の軍備配置を1997年(露NATO基本合意書調印)時点に戻す

 昨日は欧州連合(EU)首脳による緊急会合が開催されたが、明日19日には先進7カ国(G7)がミュンヘン安全保障会議に合わせて外相会合を開き、来週にはオンライン形式での首脳会議開催が検討されている。