23日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、ロシア軍の本格的なウクライナ侵攻に対する警戒感が高まる中、リスク回避の円買いが強まり、114.93円まで下落した。ユーロドルは1.1301ドル、ユーロ円も129.95円まで軟調に推移した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、ロシアによるウクライナ侵攻への警戒感から上値が重い展開が予想される。
9時30分に発表される10−12月期豪民間設備投資(予想:前期比+2.6%)は、GDPの形成要素であることで、サプライズの場合には要警戒か。
現状のウクライナ情勢は以下の通りとなっている。
米国防総省(ペンタゴン)高官は、ロシアがウクライナとの国境沿いに最短で5キロの地点に集結させた軍部隊のうち80%が戦闘態勢を整えており、いつでもウクライナを全面的に侵攻できる状態にある、黒海に揚陸艦を含む20隻以上の軍艦も配備している、と述べた。バイデン米政権はゼレンスキー・ウクライナ大統領に、ロシア軍が48時間以内に本格的な侵攻を開始する可能性があると警告した。
ウクライナのダニロフ国家安全保障・国防会議書記は、全土への非常事態宣言の発令を提案した。
欧州連合(EU)首脳は、本日ブリュッセルで緊急会議を開催し、ウクライナ情勢を協議する予定となっている。
プーチン露大統領がウクライナ東部の親ロシア派2地域「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立を承認し、平和維持軍を派遣したことで、欧米諸国による経済制裁第1弾が発動され始めている。しかし、プーチン露大統領にとっては、ウクライナ侵攻を踏み止まることによるリスクが、侵攻して経済制裁を受けるリスクよりも大きいとの判断なのかもしれない。
プーチン露大統領は、2008年8月の北京夏季五輪の時のグルジア(現ジョージア)侵攻と2014年2月のソチ冬季五輪終了後のクリミア侵攻では、当初の計画が破綻して土壇場に追い込まれた時、「偽旗作戦」により武力行使に出ている。クリミア侵攻は、2014年2月27日、ソチ冬季五輪閉会4日後、新月(3月1日)前に開始しており、今回も20日の北京冬季五輪終了後、新月(3月3日)に向けて予断を許さない状況は続く。
想定される「偽旗作戦」は、ウクライナのロシア傭兵がロシアの平和維持軍に向けて迫撃砲を撃ち、平和維持軍は、「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」のロシア系住民の保護を旗印に反撃するというパターンとなる。おそらく、ベラルーシと合同軍事演習をしていたロシア陸軍や黒海で軍事演習をしていたロシア海軍も参戦することで、グルジア紛争やクリミア紛争と同様に短期間でキエフ制圧が完了し、親ロシア派による傀儡政権が樹立されると思われる。
外国為替市場への影響は、ユーロが売られて、避難通貨のスイスフランが買われ、有事のドル買いも予想される。ドル円に関しては、有事のドル買いよりもリスク回避の円買いが大きいと思われ、下落が予想される。原油や天然ガス価格が上昇し、穀物価格も上昇することで、インフレ高進懸念が高まることになる。欧州は天然ガスの35%をロシアに依存しており、その大半はパイプラインで送られている。ドイツは、制裁措置として、ロシア産天然ガスをドイツに送る新たなパイプライン「ノルドストリーム2」を停止する可能性を警告し、バイデン米大統領も、ノルドストリーム2とその会社役員に制裁を科すよう指示を出した。