14日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日米金融政策の方向性の違いに着目した円売り・ドル買いや米10年債利回りが2.14%台まで上昇したことなどで118.22円まで上昇した。ユーロドルはロシアとウクライナの停戦交渉が進展するとの期待から1.0994ドルまで上昇、ユーロ円も129.71円まで上昇した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今週開催される日米金融政策決定会合での日米金融政策の乖離観測で2016年のトランプラリー高値118.66円を窺う展開が予想される。
 ウクライナ情勢に関しては、本日開催予定の第4回停戦協議を待つ展開となる。

 ドル買い・円売り材料は、日米金融政策の乖離観測(FRBは0.25-50%の利上げ、日銀は据え置き観測)、エネルギーや穀物価格の上昇で貿易赤字継続観測が挙げられる。上値の目処は、2016年12月15日のトランプラリー高値118.66円、125.86円から99.02円までの下落幅の76.4%戻しの119.53円が挙げられる。ドル売り・円買い材料は、3月期末決算に向けた本邦機関投資家のレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)、実質実効為替相場(2021年末98.25円)の20%前後が経験則的な上限であること、ロシアのデフォルト(債務不履行)懸念、などが挙げられる。
 15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米国2月の消費者物価指数が1982年1月の前年比+8.3%以来となる前年比+7.9%を記録したことで、パウエルFRB議長が示唆した0.25%は既定路線であり、サプライズ的な0.50%の可能性が警戒されつつある。
 17-18日の日銀金融政策決定会合では、黒田日銀総裁の発言「原油価格や穀物価格が上昇することによるコストプッシュ型の物価高は、物価の持続的な上昇に繋がらないことから、景気に悪影響及ぼす金融緩和の縮小や金融引き締めは適当でない」から、金融緩和政策の現状維持が予想されている。

 黒田日銀総裁は、ドル円が2015年6月に125.86円まで上昇した局面では、「実質実効為替レートではかなりの円安であり、一段安はありそうにない」と円安を牽制することで、黒田シーリングによりドル安・円高に反転させた。しかし、現状は、「現在の円安は経済にプラス、実質実効レートに基準ない」と述べており、黒田シーリングを撤廃している。
 神田財務官は、先日、円安に関して「プラスとマイナスの両面がある。経済主体によって円安、円高双方で損するか得するか分かれ、一概に評価することは難しい」と述べている。円安に伴うメリットでは「輸出金額や海外子会社での売り上げ、配当金収入は円ベースでみるため、グローバルに展開する企業の収益が増える」と指摘した。一方、デメリットとして「エネルギーや食品などの輸入価格が上昇し、消費者負担や企業の原材料費が増えることが挙げられる」と述べた。黒田日銀総裁は、財務官時代の円売り介入で、米国債の買い持ちポジションを14兆円(持ち値:113.80円付近)増やしているが、ドル建てに換算すると約123億ドルのドル買持ポジションとなるので、1円の為替益は123億円、117.80円で手仕舞えば、約492億円となる。当時は、貿易黒字国であり、輸出企業を支援するためのドル買い・円売り介入だったが、現状は、貿易赤字国であり、輸入企業の原油購入を支援するためのドル売り・円買い介入ならば、岸田政権の政策にも整合的だと思われる。