4日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは、緊迫化するウクライナ情勢と欧州の天然ガス価格の上昇によるスタグフレーションへの警戒感から1.0886ドルまで下落した。ユーロ円も125.07円まで売られた。ドル円は、ウクライナ情勢の一段の緊迫化を受けた欧米株の下落で114.65円まで下値を広げた。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、本日予定されているロシアのウクライナの第3回停戦協議への警戒感から上値が重い展開が予想される。

 ドル円の買い材料は、有事のドル買い、原油価格上昇によるドル買い、15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%の利上げの可能性を受けたドル買いが挙げられる。
 ドル円の売り材料は、安全資産である米国債が買われていることによる米中長期金利の低下、地政学リスク回避の世界的な株安やロシアのデフォルト(債務不履行)懸念によるリスク回避の円買い、などが挙げられる。

 4日、ロシア軍は、ウクライナ南部にある欧州最大級のザポリージャ原発を制圧した。もし、ザポリージャ原発が爆発した場合、チェルノブイリ原発事故の10倍の規模となる模様で、プーチン露大統領は欧州の安全保障を人質にとったことになる。

 5日、バイデン米大統領は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領と電話会談を行い、「ウクライナ向けの安全保障・人道・経済支援を増やしており、追加資金の確保に向け米議会と緊密に協力している」と述べた、と報じられている。

 そして、本日、ロシアとウクライナが第3回目の停戦協議を行う予定となっている。プーチン露大統領はショルツ独首相との電話会談で「ロシアの要求がすべて満たされることが条件」と改めて強調した。さらに、トルコのエルドアン大統領との電話会談では、「戦闘を終わらせるにはウクライナ政府がロシアの要求に応じなければならない」と述べており、停戦合意の可能性は低いと思われる。

 プーチン露大統領は、核戦力を「特別警戒態勢」に移行し、「エスカレーション抑止」と呼ばれる核戦略理論を展開しつつある。すなわち、原発の制圧を切り札にして、ゼレンスキー・ウクライナ政権に対しては退陣を要請し、北大西洋条約機構(NATO)に対しては武力による参戦を牽制、阻止している。

 かつて、ニクソン第37代米大統領は、キッシンジャー米国務長官(当時)と共に、「マッドマン・セオリー=狂人理論」を駆使して、ソ連や南ベトナムに対峙していた。すなわち、1969年10月、ニクソン政権はアメリカ軍に世界規模での全面戦争にそなえて臨戦態勢をとるように命じ、ソビエト連邦に「狂人が解き放たれた」ことを示し、水素爆弾を搭載したアメリカの爆撃機を3日連続でソ連の国境付近を飛行させた。1969年7月、ニクソン政権は南ベトナムの大統領であったグエン・バン・チューに、核兵器を使うか連合政権を立てるかを迫った。

 プーチン露大統領も核戦力を駆使することで、「マッドマン・セオリー=狂人理論」を展開しているのかもしれない。