11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、日米金融政策の乖離を受けた円売り・ドル買いが優勢となり、117.36円まで上昇した。ユーロドルは、欧州市場では、プーチン露大統領発言「ウクライナとの交渉で一定の前向きな動きがあった」を受けて1.1043ドルまで上昇したものの、NY市場では、クレバ・ウクライナ外相発言「前日のロシアとの協議では、プーチン氏が言及した進展は見られなかった」を受けて1.0902ドルまで下落した。ユーロ円は欧州時間に129.04円まで上昇後、NY午後には127.83円付近まで反落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、今週開催される日米金融政策決定会合での日米金融政策の乖離観測から堅調推移が予想される。
ウクライナ情勢の緊迫化は、ロシア産石油禁輸による原油価格上昇で、原油購入のためのドル買い・円売り要因となる。
ドル円の上値を抑える材料としては、3月期末決算に向けた本邦機関投資家のレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)、そして、ロシアのデフォルト(債務不履行)懸念となる。1998年8月、ドル円は米系ヘッジファンド筋の円キャリー・トレードなどで147.64円まで上昇していたが、ロシアのデフォルト、そして史上最大のヘッジファンド破綻である「LTCM破綻危機」により、翌年の101.25円まで下落していった。ロシアがデフォルトに陥った場合、投資家の損失が膨大となることで要警戒か。
15-16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米国2月の消費者物価指数が1982年1月の前年比+8.3%以来となる前年比+7.9%を記録したことで、パウエルFRB議長が示唆した0.25%の利上げではなく、0.50%の可能性が警戒されつつある。インフレ率が7.9%で、FF金利が0.50%でも、実質短期金利はマイナス7.4%であり、米連邦準備理事会(FRB)のインフレ対応の大幅な遅れが目立つ状況には変わりない。
1982年1月のインフレ率8.3%の時のFF金利は15%、米10年債利回りは14.59%、ドル円の終値は228.30円だった。ドル円は、レーガン政権のドル高政策により、1982年10月の278.50円まで上昇して行く。
17-18日の日銀金融政策決定会合では、金融緩和政策の現状維持が予想されている。黒田日銀総裁は「原油価格や穀物価格が上昇することによるコストプッシュ型の物価高は、物価の持続的な上昇に繋がらないことから、景気に悪影響及ぼす金融緩和の縮小や金融引き締めは適当でない」と述べており、欧米英加、ニュージーランドの中銀の出口戦略とは、一線を画している。
ドル円は117円台まで上昇しており、2016年12月15日のトランプラリーで到達した118.66円に迫りつつある。エリオット波動分析では、第1波動(75.32円-125.86円:+50.54円)、第2波動(125.86円-99.02円:半値押し)に続く第3波動の可能性が高まりつつある。第3波動の目標値は、第1波動の値幅と同じと仮定した場合、149.56円処となる。そして、ドル・円相場は、これまで8年サイクルで高値をつけているが、次の8年目の2023年に向けて147-150円を目指すというシナリオが現実味を帯びつつある。