29日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは、ロシアとウクライナの停戦交渉で進展があったとの報道を受けて、一時1.1137ドルまで上昇した。ドル円は、建設的な和平交渉、米長期金利の低下などから121.98円まで下落。ただその後は122円後半まで下値を切り上げた。ユーロ円は137.31円まで上昇後、135円後半まで売り戻される場面があった。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、年度末の本邦機関投資家のレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)、ウクライナとロシアの停戦協議の進展を受けた有事のドル買い圧力の後退、原油上昇の一服による円売り圧力の後退などで上値が重い展開が予想される。しかし、日銀による31日までの「連続指し値オペ」により下値は限定的か。

 停戦交渉が建設的だったとの報道を受けて、米10年債利回りは前営業日比0.07%低い2.39%で引けており、ドル買い圧力を後退させた。また、リセッション(景気後退)の前兆とされる2年債と10年債利回りの長短金利逆転(逆イールド)も発生しており、今後の懸念材料となっている。さらに、WTI原油先物価格も続落して終え、ドル買い・円売り圧力を後退させている。

 日銀が「指し値オペ」により、日本国債を購入して、円を市場に供給した場合、長期金利の上昇抑制による円安要因と、円資金の供給という円安要因となる。またもし、日銀が米国ドル(※米国債)を購入して円を市場に供給した場合、ドル需給の逼迫によるドル高要因と円資金の供給という円安要因となる。すなわち、日銀が日本国債購入の対価、米国債購入の対価として円を供給する構図は変わらないことで、結果的な円安誘導の謗りを免れないことになる。

 昨日、神田財務官はボーコル米財務次官との日米財務官協議の後、為替に関して「日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認した。G7やG20での為替に関する合意を維持していくことも確認した」と述べた。また、鈴木財務相も「悪い円安にならないようしっかり注視」と述べている。
 G7・G20の為替合意とは、「為替市場において過度の変動や無秩序な動きは経済に悪影響を与えるので、為替レートの安定が極めて重要」であり、「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしない為替相場のコミットメント」である。
 米財務省が毎年4月と10月に米議会に提出している為替報告書では、日本に関して、日銀による大規模な金融緩和政策が円安の要因となっている、と指摘されている。