30日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米10年債利回りの低下を受けて、122円付近での上値が重い展開となった。ユーロドルは、3月独消費者物価指数(CPI)速報値が予想を上回ったことで、欧州中央銀行(ECB)の早期の利上げ観測が台頭し1.1171ドルまで上昇した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、年度末の本邦機関投資家のレパトリエーション(国外滞留資金の本国環流)の円買いと本日までの日銀の連続指し値オペによる円売りとの攻防を見極めることになる。
レパトリの円買いと指し値オペの円売りの攻防は、本日で終わる見込みなので、明日の新年度からは、ウクライナ情勢、原油価格の動向、欧米英各国の金融政策正常化などが主要テーマとなってくる。
昨日は、黒田日銀総裁が岸田首相と定例会談に臨み、為替に関する話題はなかったとのことで、岸田首相には現状の円安に対して「悪い円安」との認識はないと思われる。黒田日銀総裁は、ドル高・円安の要因は、輸入企業のドル買いや米金利上昇によるものであり、日銀の金融市場調節が直接的に影響したものではない、と述べた。
今年の1-3月のドル円相場の変動幅は、1月24日の安値113.47円から3月28日の高値125.09円まで11.62円上昇しており、目先の目標値である2015年6月5日の高値125.86円に迫った。そして、過去5年の平均値幅10.64円をすでに上回っている。
円安の要因としては、原油価格高騰を受けた貿易・経常赤字という構造的な要因、欧米英などの中央銀行が金融政策の正常化に踏み出しているものの、日本銀行は金融緩和策継続を表明していることによる、金融政策の乖離などが挙げられている。
今週の125.09円までの円安の背景には、28日に日本銀行が29-31日の連続指し値オペを通知したこと。
個人的な見立てなのだが、日銀による年度末の円安誘導の背景には、金融機関がロシア向け債権や外債投資で損失を被っていることで、昨年度末の110円台から今年度末の120円台に円安にすることで、損失を軽減する目論見なのではないだろうか。ある大手金融機関のロシア向け債権の残高は約2200億円、外債投資の含み損は約1600億円と報じられているが、他の金融機関も同じような状況だと推測される。
テクニカル分析では、28日の日足は天井圏を示唆する「上影大陽線」となり、高値の125.09円と終値の123.86円までの1.23円幅は売り圧力が優勢だったことを示唆する価格帯となった。29日の日足は高値圏での反転を示唆する「インサイド・デイ(孕み線)」、30日の日足は、2手連続陰線となり、28日の「上影大陽線」を下抜けて、一目均衡表・転換線も下回っていることで、調整局面入りの可能性が示唆されている。