8日のニューヨーク外国為替市場でユーロドルは、「欧州連合(EU)は大規模な共同債発行を検討」や「ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)加盟を主張しない意向」との報道を受けて1.0958ドルまで上昇した。ユーロ円も126.73円まで上昇した。エネルギー価格の高騰が世界景気を冷やすとの懸念からドル買いが強まり、ドル円は115.79円まで続伸した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、ゼレンスキー・ウクライナ大統領の発言「ロシアが侵略した理由の1つであるNATO加盟を、ウクライナはもはや主張していない」を受けて、地政学リスク回避が後退する可能性に要警戒となる。

 今後は、ロシアとウクライナの第4回停戦協議や明日トルコで予定されているロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相の会談での戦闘終結に向けた協議に注目する展開が予想される。

 WTI原油先物価格は、バイデン米大統領が、原油やガスといったロシア産化石燃料の輸入を禁止すると発表したことで、一時129.44ドルまで上昇した。原油価格の上昇は、ドル買い・円売り要因となる。しかし、その後ゼレンスキー・ウクライナ大統領の発言を受けて119ドル台まで反落しており、ウクライナ大統領の発言の真相を見極めることになる。

 また、欧州連合(EU)は、今週にも、エネルギーや防衛関連の支出に充てるために、債券の共同発行計画を発表する、と報じられている。ユーロ圏での大規模な財政支出計画を受けて、明日の欧州中央銀行(ECB)理事会での金融政策面での対応に要注目となる。

 8時50分に発表される日本の10-12月期国内総生産(GDP)改定値は、速報値の2四半期ぶりのプラス成長前期比年率+5.4%から前期比年率+5.6%へ上方修正されることが見込まれている。しかしながら1-3月期のGDPは、原油価格の上昇やまん延防止等重点措置などから減速が見込まれており、4-6月期も減速傾向が続いた場合は、日本経済がリセッション(景気後退)に陥る可能性が高まることになる。

 昨日のニューヨーク市場では、米10年債利回りと米2年債利回りの長短金利差が一時0.2%を割り込む局面があり、米国がリセッション(景気後退)に陥る可能性が警戒された。

 10時30分に発表される2月中国消費者物価指数(CPI)の予想は前年比+0.9%で1月の前年比+0.9%と変わらず、2月中国生産者物価指数(PPI)予想は前年比+8.7%で1月の前年比+9.1%からの伸び率鈍化が見込まれている。世界的なエネルギー価格や穀物価格の高騰にも関わらず、中国経済にはインフレへの警戒感はなく、中国人民銀行は金融緩和を打ち出しており、2月のインフレ率鈍化は、金融緩和策を裏付けすることになるのかもしれない。