31日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、米長期金利の低下に伴う円買い・ドル売りや、ロンドン・フィキシングに絡んだドル売りのフローなどから一時121.28円まで下落した。ユーロドルはロシア産天然ガス供給への不透明感からユーロ圏経済への悪影響を懸念した売りが優勢となり1.1061ドルまで下落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米国3月の雇用統計への期待感から底堅い展開が予想される。他にドル円の下値を支える要因としては、日銀が4-6月期の長期国債買い入れ予定額で、中長期ゾーンを増額し、超長期ゾーンは回数を増やしたことが挙げられる。

 ドル円の上値を抑える要因としては、米10年債利回りの低下や原油価格の低下、そして岸田首相の発言「為替について米国などと意思疎通を図りつつ適切に対応」が挙げられる。

 先日、神田財務官はボーコル米財務次官との日米財務官協議の後、為替に関して「日米の通貨当局間で緊密な意思疎通を図っていくことを確認した。G7やG20での為替に関する合意を維持していくことも確認した」と発言。また、鈴木財務相も「悪い円安にならないようしっかり注視する」と述べている。

 G7・G20の為替合意とは、「為替市場において過度の変動や無秩序な動きは経済に悪影響を与えるので、為替レートの安定が極めて重要」であり、「通貨の競争的な切り下げを回避することや競争力のために為替レートを目標とはしない為替相場のコミットメント」である。岸田首相自らが、米国と意思疎通して適切に対応すると発言したことは、夏の参議院選挙を見据えた輸入物価抑制のために「悪い円安」を抑制したい意図があるのではないだろうか。

 8時50分に発表される3月調査の日銀短観は鈍化が見込まれている。年明け以降のオミクロン株拡大で蔓延防止等重点措置が発令されたことで、今年1-3月期実質国内総生産(GDP)がマイナス成長に落ち込んだ可能性があるためだ。しかしながら、4-6月期GDPはプラス成長に浮上するとの期待感があるため、先行き見通しや2022年度ドル円想定為替レートなどの方が要注目となりそうだ。

 米国3月の雇用統計の予想は、失業率が3.7%(2月3.8%)、非農業部門雇用者数が前月比49万人の増加(2月+67.8万人)と見込まれている。3月の雇用統計調査対象週(3月12日)の新規失業保険申請件数や失業保険継続受給者数は減少し、3月消費者信頼感指数の雇用関連指数も改善していたことで、ポジティブサプライズを警戒することになる。

 米3月雇用統計が予想通りに良好な数字だった場合、5月3-4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、パウエルFRB議長や複数のFRB高官が言及していたように0.5%の追加利上げの可能性が高まることになり、ドル買い・円売り要因となる。