5日のニューヨーク外国為替市場でドル円は123.67円まで上昇した。ブレイナードFRB理事、ジョージ米カンザスティ連銀総裁、デイリー米サンフランシスコ連銀総裁らのタカ派発言を受けた動き。ユーロドルはロシアに対する追加経済制裁への警戒感や米10年債利回りが2.56%台まで上昇したことで1.0900ドルまで下落した。
本日の東京外国為替市場のドル円は、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での0.50%の利上げとバランスシート縮小開始観測を受けて堅調推移が予想される。
昨年までハト派の急先鋒だったブレイナードFRB理事は、5月のFOMCで利上げとバランスシート縮小の開始に言及した。今回の金融引き締めサイクルは前回と異なり、利上げと量的金融引締政策(QT:Quantitative tightening)が同時期に進行する可能性が高まっている。前回は、利上げが2015年から2018年まで、QTは2017年から2019年までで、開始時期が2年程度ずれていた。
ドル円の上値を抑える材料としては、岸田政権が今月末までの策定を目指している原油価格や物価の高騰に対応するための「総合緊急対策」で「悪い円安」を抑制する措置が打ち出される可能性となる。
円安に関して、岸田首相、鈴木財務相、神田財務官のラインで、米国と連携して、G7の為替合意を掲げて、口先での円安抑制が警告されており、今後も、円安に関する発言には要警戒となる。昨日は、鈴木財務相が「為替の安定は重要。為替の急激な変化は一番に注意しないといけない。円安含め為替市場の動向の日本経済への影響を注視」と述べ、岡本財務副大臣も「為替の急激な変動は好ましくない。為替動向、緊張感をもって注視する」と述べている。
昨日、黒田日銀総裁が衆院財務金融委員会で、2013年のアベノミクスの時の「政府・日銀の共同声明」に言及。これにより、岸田政権の「総合緊急対策」では、輸入物価の上昇の一因となっている「悪い円安」を抑制する措置が打ち出される可能性が高まっている。
2013年の「政府・日銀の共同声明」では、日銀も政府もデフレ脱却を目指した。しかしながら、岸田政権が「総合緊急対策」で原油価格高騰による輸入物価上昇を抑制する意向なので、黒田総裁も輸入物価上昇の一因となっている「悪い円安」のスピードを牽制せざるを得ないのかもしれない。
黒田総裁は昨日、「為替相場の変動、最近はやや急ではないかと思っている。為替相場は経済・物価に大きな影響を与えるため、引き続き注視していく」と発言。しかし、総裁は「円安が全体として日本経済にプラスとの基本姿勢は変わらない」とのこれまでの持論も述べている。
2015年6月のドル円125円台での円安牽制は、「実質実効為替レート」という「円安のレベル」への牽制だったが、昨日の牽制は、「円安のスピード」への牽制だったことで、ドル高・円安のトレンドを反転させるものではない。