22日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、「黒田日銀総裁が米コロンビア大学での講演で、円が下落しても積極的な金融緩和を継続する必要があると発言した」との報道で129.11円まで上昇した。しかし、「円が下落との部分はなく、円についての言及はなかった」との訂正報道で一時128.44円付近まで反落した。ユーロドルは米10年債利回りが低下したことで1.0845ドル付近まで反発したものの、米国株相場の下落に伴うリスク・オフのドル買いで1.0771ドルまで反落した。

 本日の東京外国為替市場のドル円は、23日に日本の財務省高官が日米財務相会談では日米協調介入の議論はなかったと発言したことで、底堅い展開が予想される。

 一方でドル円の上値を抑える要因としては、金曜日のニューヨーク株式市場の大幅下落を受けて日経平均株価の下落が予想されることによるリスク回避の円買いか。

 くわえて、27-28日の日銀金融政策決定会合への警戒感も浮上している。すなわち、28日に公表される経済・物価情勢の展望(展望リポート)では2022年度の消費者物価見通しが1%台後半に引き上げられて、30年ぶりの高水準となり長期金利上昇が容認される可能性に要警戒となる。

 さらに、岸田政権が今月末までの策定を目指している原油価格や物価の高騰に対応するための「総合緊急対策」での「悪い円安」を抑制する措置が打ち出される可能性にも注意が必要だろう。

 21日に開催された日米財務相会談では、鈴木財務相も財務省高官も「日米協調介入に関してはノーコメント」だった。しかし、会談に参加した日本の政府関係者が、日米協調介入を協議したことを認め、さらに、「アメリカ側は前向きに検討してくれるトーンだった」と述べ、このアメリカの反応は円安に苦しむ日本政府にとっても驚きだった、との報道が疑心暗鬼を生んでいた。

22日に米国財務省は、「イエレン財務長官と鈴木俊一財務相は為替市場を含む金融市場の動向を協議し、為替レートに関してはG7やG20の従来のコミットメントを維持する重要性を強調した」との声明を発表。そして23日には、匿名を条件にした本邦財務省高官が、日米財務相会談で日米協調介入が議論されたとの報道を否定している。

 先週のG-7声明でも為替市場の過度な変動を注視する、と言及されたものの、具体的な為替水準への言及はなかった。

 また、IMFアジア太平洋局のサンジャヤ・パンス副局長は、「最近の円安はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)主導であり、日銀の超低金利政策を含む日本の経済政策を変更する理由にはならない」と述べている。そして、日本の当局が円買い介入を行うのは妥当かとの問いに対しては「現時点で外為市場に無秩序な状況は見られない。市場が無秩序でない限り為替政策スタンスは適切、というのがわれわれの通常のアプローチだ」と言及した。

 米国サイドからみても、米国財務省や米連邦準備理事会(FRB)の喫緊の課題は、インフレ抑制であり、インフレを抑制するドル高に歯止めをかける為替政策の可能性は低いことになる。