本日の東京外国為替市場のドル円は、今夜発表される米国4月の消費者物価指数(CPI)を控えて米10年債利回りも上昇が一服しており、動きづらい展開か。
バイデン米大統領は、昨日のインフレ対応に関する演説で、高インフレによる国民への重圧を理解しており、政権の最優先課題として、米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制に向けて取り組んでいる、と表明した。そして、全米の家計がインフレに圧迫されていることを認識し、自分自身がインフレ問題を真剣に受け止めており、国内の最優先課題に位置づけていることを分かってもらいたい、と述べた。米国内の物価押し下げに向けて、トランプ政権下に導入された対中関税の撤廃を検討していることを明らかにした。
今夜発表される米国4月の総合CPIは前年同月比+8.1%、コアCPIが前年同月比+6.0%と、3月の+8.5%、+6.5%に比べていずれも減速することが予想されている。減速予想の背景としては、モノに対する過剰な需要が弱まりつつあることが挙げられている。
もし米4月CPIが予想通りに鈍化していた場合、4月の平均時給も鈍化していたことで、市場の一部で囁かれ始めている「米国のインフレ率ピーク説」が裏付けられることになる。米国のインフレ率は、昨年春のバイデン米政権の現金給付により、上昇基調を辿ってきた。インフレ率は、前年同月比ベースなので、本日発表される4月のCPIは、昨年4月分との比較になることで、今後は、上昇率が鈍化していくことが想定されている。
3月のインフレ率前年同月比+8.5%という数字は、今年3月のインフレ指数287.708と去年の3月インフレ指数の265.028との比較である。昨年のインフレ指数は、バイデン米政権による現金給付により、12月にかけて280.126まで上昇した。すなわち、今年4月以降のインフレ率が上昇基調を継続するには、昨年4月以降の上昇基調を上回っていく必要がある。つまり、分子(今年)と分母(前年)の増加幅という「ベース効果」に注目ということだ。そこで、「前年同月比」ではなく「前月比」がポイントとなるが、3月のコアインフレ率は、前月比+0.3%に留まり、2月の+0.5%、1月の+0.6%から低下基調にあることで、「インフレ率ピーク説」が浮上している。
今後、インフレの上昇基調が鈍化していく可能性があるものの、ベース効果などにより、2、3カ月程度は実際のインフレ水準がどこにあるのか判断が難しくなることで、FRB高官の見解にも要警戒となる。
しかしながら米国のインフレ率が8%台でピークアウトしても、FRBは、現在のFF金利誘導目標0.75-1.00%を中立金利と見なされている2.4%以上の2.75-3.00%まで引き上げ、バランスシートの縮小も開始する。金融政策の正常化路線は続くことで、市場への影響はほとんど無いと思われる。
本日10時30分に発表される中国4月の消費者物価指数と生産者物価指数は、都市封鎖(ロックダウン)の影響によるネガティブサプライズ、リスク回避要因となる可能性に要警戒か。