11日のニューヨーク外国為替市場でドル円は、4月米消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことで130.81円まで上昇後、米10年債利回りが3.07%台から2.92%台まで急低下したことを受けて129.45円まで反落した。ユーロドルは1.0502ドルから1.0577ドルまで上昇後に上値を切り下げた。
本日の東京外国為替市場のドル円は、ニューヨーク株安によるリスク回避の円買いと米10年債利回りが2.9%台で推移していることによるドル安で伸び悩む展開が予想される。
ドル円は、4月米CPIの結果を受けて米連邦準備理事会(FRB)による金融政策引き締めが一段と積極化する可能性は低いとの見方から、上値が重い状況となっている。
米国4月の総合CPIは前年同月比+8.3%、前月比+0.3%、コアCPIは前年同月比+6.2%、前月比+0.6%と発表され、いずれも予想を上回った。しかしながら、3月の+8.5%、+6.5%に比べて減速していたことで、今後は、ベース効果などにより、2、3カ月程度は実際のインフレ水準がどこにあるのかを見極めつつ、「米国のインフレ率ピーク説」を検証していくことになる。
3月米連邦公開市場委員会(FOMC)でのドット・プロット(金利予測分布図)によると、2023年末時点のFF金利誘導目標は2.75-3.00%となり、2.4%にやや引き下げられた「中立金利」を若干上回ることになる。FRBは、中立の実質金利を0.5%と想定しているので、中立水準が2.4%ならば、インフレ率は1.9%(=2.4%-0.5%)程度まで下がる見通しとなる。
パウエルFRB議長は、5月FOMC後の記者会見で、「必要とあれば中立水準を上回る利上げも躊躇しない」と述べ、インフレ抑圧に対する強い姿勢を打ち出した。すなわち、インフレ率の動向次第では、ブラード米セントルイス地区連銀総裁が主張している年内に3.5%まで引き上げる可能性もあることで、日米金融政策の乖離を受けたドル高・円安トレンドは継続していくことになる。
またパウエルB議長は、インフレ率高進の背景として、コロナ禍からの回復に伴う需要増、タイトな労働需給、長期化するサプライチェーン(供給網)の混乱、そして、ウクライナ戦争と中国ロックダウン(都市封鎖)などの複合要因を指摘している。
ウクライナ戦争に関しては、プーチン露大統領が戦術核を使用する可能性や欧州連合(EU)がロシア産原油の禁輸を打ち出す可能性があることで、原油価格高騰の長期化懸念が払拭できない状況が続くことになる。
本日は、4月27−28日の日銀金融政策決定会合における主な意見が公表されるが、展望リポートで2022年度の物価見通しが引き上げられたにも関わらず、毎営業日の指し値オペ運用など強力な金融緩和策の継続が決定された背景などを見極めることになる。